2013年3月31日日曜日

42.195kmの科学

42.195kmの科学 』(NHKスペシャル取材班/角川書店)


この本は、ロンドン五輪前にNHKスペシャル「ミラクルボディー持久力の限界に挑む」(2012年7月16日放送)で放送された内容を元に、番組では紹介しきれなかった逸話やデータも盛り込んだ読み物となっています。

副題に”マラソン「つま先着地」vs「かかと着地」”とあり、あまり期待していなかったのですが、単なるつま先・かかとの話ではなく、読み応えがあり参考になりました。

ちなみに、私は、裸足でもシューズでもいいし、目標がタイムでも完走でも、旅ランでも、仮装でもいいと思っています。ランニングはいろいろな楽しみ方のある広くて深い趣味だと思っています。

さて、本書(番組)では、マラソンの記録を決める3つの要因、最大酸素摂取量(VO2max)乳酸性作業閾値(LT)ランニング・エコノミーについて、皇帝ハイレ・ゲブレシラシエ、世界記録保持者パトリック・マカウ、世界2位ロンドン銅ウィルソン・キプサングに密着して科学的に分析しています。

第1章 マラソンを高速化させた肉体の秘密

皇帝ハイレの肉体について科学的に分析しています。興味深かったのはトレーニング内容。「山道を走ることを強く勧めます」と語っていてロードの練習は週2回ほどしかしないのだそうです。練習は朝夕の2回。

朝:標高3000m
山道で1時間半程度のインターバル走、3時間ロング走(週1回)、上り坂を使った筋力強化など

夕:標高2400m
トレッドミルで15km走(3'00/km以内)+固定バイク13分以内に10km(160rpm

固定バイクは心肺機能だけでなく、足を素早く回転させるのに効果的な訓練とのこと。トラック選手だった1993年当時から実施しているそうです。

私も一昨年から芝や土コースで走り、固定ローラーも実施しています。レベルは違うものの目的は同じで方向性は間違っていないと確認できました。それにしても160rpm(1分間に160回転)で13分は凄い。インターバルもロードに拘らず、クロカンコースで実施してみようかな。

第2章 究極の”省エネルギー走法”

世界記録保持者マカウの走法に焦点をあて、LT値とランニング・エコノミーについて分析しています。LT値を超える、または乳酸が4.0ミリモルを超えると乳酸が急激に溜まり始めます。マカウは世界記録ペース(2'55/km)で走っている時でも3.2ミリモルまでしか上がらないそうです。疲れ知らずの走りにはフォームが影響しているようです。

重心移動
マカウの走法は、これまでの東アフリカの選手(前傾して足を大きくスイングして飛ぶような走り方)とは異なり、姿勢を真っすぐにして体全体の筋肉をリラックスさせ足を低く前へ出していくような走り方。マカウ自身も「飛ぶことにではなく、前進することにだけ集中しています」と、上下動の少ない走りを強く意識しているそうです。

着地
マカウの着地はフォアフットで着地時に受ける衝撃は体重の1.6倍と極めて小さいそうです。ちなみに踵寄りで着地する日本代表の山本選手は2.2倍。一般には3.0倍を超えるケースもあるそうです。これにはブレーキがかからない接地(接地の直前に一旦足底を地面と水平にしてからスッと引き戻して着地をする動き)をしていることが秘密のようです。マカウ自身も「衝撃を感じない着地をするよう心がけてきました」と、こうした着地を強く意識しているそうです。

また、ブレーキが小さく減速しづらいため、足がそっと地面から離れるような蹴り方でも十分ペースを維持できるそうです。より少ない力でスムーズに重心移動をする。効率的なランニング・フォームで走ることの重要性を再認識しました。ウルトラ系にも生きてくると思うので試行錯誤していきたいと思います。

この章の、東アフリカの選手はなぜフォアフットで走れるのかやアキレス腱の話も興味深かったです。

第3章 最強ランナーが生まれる驚異のビジネスモデル

マカウは極貧の少年時代を過ごし、賞金を稼いで家族を楽にしてあげたいと考えて20歳の頃に村を出たそうです。肉体の限界を超える局面でも、苦しかった生活の記憶が最後の気力を支えているそうです。ちなみに、ハイレもマカウもキプサングもお酒は飲まないストイックな生活を送っているそうです。強いわけだ。。。

第4章 人類が2時間を切る日~マラソン研究の最前線~

この章では加齢による記録の低下という項が興味深かったです。ジョイナー博士によれば、加齢による記録の低下は、筋力の衰えではなく、心肺機能の衰えからくると述べています。

一番の理由は、最大心拍数(一般的に220-年齢と言われる)が下がることで最大酸素摂取量(VO2max)が低下することが原因だそうです。

運動しない人の場合、30歳から10年ごとに10%低下しますが、激しい持久系トレーニングをしている場合、10年ごとに5%低下に抑えられるそうです。

20代から20年近く運動らしい運動をしてこなかったことが悔やまれますが、ハイレの「年齢というのはただの数字に過ぎない」という言葉を励みに、水泳やスピードトレーニングで低下の割合を抑えていきたいと思います。

0 件のコメント:

コメントを投稿