2011年11月4日金曜日

禅的ランニング

禅的ランニング 』(ラリー・シャピロ著/坂本マリ訳/道出版)


禅(ぜん)」とは、大乗仏教の一派であり、南インド出身の達磨(だるま)が中国に入り教えを伝えて成立したとされている。日本に純粋な禅宗が伝えられたのは鎌倉時代であり、室町時代に幕府の庇護の下で発展した。明治維新以降は、日本の禅が世界に伝えられた。(Wikipediaより)

本書は、ウィスコンシン大学教授でありランナーでもある著者が、禅の考え方をランニングに取り入れ、どんな状況でも静かな心で走り、人生に平穏と調和をもたらす方法を紹介しています。

例えば、下記のような問題に対して禅的な解決方法が紹介されています。
  • しばしば走るモチベーションが低下して悩んでいる
  • ランニングの予定と家族と過ごす時間の折り合いがつかない
  • ランニングをする環境に恵まれていないと感じる
  • ランニングにより大きな充足感を求めている
  • 自分にぴったりのトレーニングプログラムを求めている
  • レースを楽しみたい
  • 怪我や加齢で調子が落ちてきている

■気づき
考えていることや感じていることを自分の意識の真正面に置き、見つめるという方法は、仏教では「気づき」と呼ばれています。「気づき」を実践することでネガティブな感情を、自分自身から隔離し、退けることができます。本書では、「気づき」の実践方法について説明されています。

「ものごと」と「ものごとに対する自分の考え」とを明確に区別する。

■執着
「執着(しゅうじゃく)」とは、特定の考えや欲望に対して並外れて強く関心を向かわせる心の働きのことです。例えば、時間帯、天候、仕事...。執着は往々にして幸せや成功への道の前に立ちふさがり、それらの達成の邪魔をします。本書では、「執着」を打破する方法について説明されています。

■正精進
「正精進(しょうしょうじん)」とは、ネガティブな感情をポジティブな感情に変える精神の活動です。「正精進」の目的は、「苦」を軽減することです。例えば家族との適切な妥協点を見つけることなど。本書では「気づき」を使って負の思考を自分の視界にとらえ、「正精進」を使って正の方向に修正する方法が説明されています。

過去を追ってはならない。未来を待ってはならない。ただ現在の一瞬だけを、強く生きねばならない。(ブッダの言葉)

■瞑想
「瞑想」の目的は、ふだんは気づくことのない自分の心、自分の世界の在りようを明確にするため、心からすべての思考を取り出し、空にすることです。本書では「瞑想」の練習方法が説明されています。次に「動きをともなう瞑想」=「禅的ランニング」の方法が説明されています。最近はこの方法に取り組んでいます。上手くいくと静かな心で集中して走れます。「ゾーンに入る」という状態でしょうか。

■覚醒
「瞑想」の先には「覚醒」があります。十分理解できていないのですが、中立的な視点で世界を捉えなおすということのようです。禅的ランニングと覚醒を取り入れることで、厳しいトレーニングは比較的受け入れやすいものとなり、レースはその喜びを増し、怪我や加齢といった避けられない問題は、よりしのぎやすいものとなります。

■中道
トレーニングにおいて最も大切なことは「自分自身に一番適した計画を立てること」で、トレーニングに「正解」はありません。ある方法が誰かにとって効果があったからといって、自分にも効果がある方法とはいえないのです。どのトレーニング方法が自分に最適か試すこと。本当に注意深く始めることが大切だと書かれていました。正にその通りだと思います。

仏教の教えの根幹を成す「中道」という概念は、極端なことは避けるべきであるということで、トレーニングプログラムの鍵ともなる概念です。本書では、中道の概念と共にトレーニング負荷の設定について説明されています。

■禅的レース
本書では、テーパリング期間(落ち着かない肉体と精神)に耐える方法が説明されています。瞑想によりレース前の緊張や不安から解消されそうです。

また、スタート前の数分もプレッシャーに押し潰されそうになる瞬間です。ここでは瞑想が難しい状況なので、精神的エクササイズの方法が紹介されています。

レースでは「ゾーン」に入る方法や「痛みを受け入れる」方法が紹介されています。先日のハーフマラソンでも試してみましたが、一定時間は集中して走ることができました。まだまだ修行が足りませんが(^^;

「ゴールすることは終わりではありません。それは始まりなのです。それは根本的に、おそらくもっとチャレンジングな、新しい目標を見つける自由というものを含んでいるものなのです。」という文章にも、その通りだと思いました。

■無常
故障や加齢は、遅かれ早かれ対峙せざるを得ないものですが、これも禅の知識により乗り越える方法が紹介されています。

ものみなうつり変わり、現れては滅びる。(ブッダの言葉)

「執着」はものごとが一定であることを必要とする概念であり、「苦」を生み出します。「なぜ私が?」「コンディションが崩れることへの苛立ち」「走る楽しみを失う悲しみ」などは「執着」によってもたらされるものです。

この世の物事はすべて、絶えず変化していくもの。過去の人生にしがみついて生きることは「苦」の原因以外の何者でもありません。禅の「無常」の概念は、ランナーが受け入れ難い事態を受け入れる手助けをしてくれます。

今この瞬間を生きる。大切なことですね。

走ることから人生について学ぶことは多いです。ランニングを通して禅を学び人生に応用していく。心が穏やかになり多くの悩みから解放される一冊でした。

2 件のコメント:

  1. > かずきさん
    こんにちは!
    ランニング本でこの手のジャンルは珍しいですよね。
    読みやすくて、ランニング以外にも応用できる内容でした。

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